予約受付開始

 楽天ブックスで『ラーマーヤナ1 蒼の皇子』上下巻、予約受付が開始されている。版元がポプラ社なのは発売元だからか。アマゾン・ジャパンではまだらしい。


 アマゾン・ジャパンで「ラーマーヤナ」で検索すると、平凡社東洋文庫版第1巻が生きている。しかし第2巻は古書のみ。この第2巻の読者レヴュー2003/07/26のやつは、実物を見ずに書いているな。さらに加えて、ヴァールミーキ版『ラーマーヤナ』は「目出度し目出度しの大団円」とは言えんだろう。最終的にシーターは追放されてしまうんだから。この点はインドでも古来大論争のもとで、この版の劈頭第一部と掉尾第七部はヴァールミーキの手によるものではなく、後世の追加だとする説の有力な根拠のひとつにもなっている。


 でもほんと、ヴァールミーキ版の全訳は欲しい。この岩本裕=訳は、訳文そのものはあんまり良くない。良くないというと語弊があるかもしれないが、読んでいてちっともおもしろくないのだ。Arshia Sattar による英訳(Penguin India, ISBN0-14-029866-5)は単純に読んでおもしろいのだから、やはり翻訳の問題だろう。だから、どうせやるのなら、別人によるものが望ましい。


 ついでに言えば、『ラーマーヤナ』の古来の語直しを読もうというのなら、まず何よりもこのヴァールミーキ版の英訳を薦める。サンスクリット語を読めれば別だが、それ以外なら、おそらくこの Sattar 訳が現在最良の版のはずだ。訳文もすばらしいし、訳者の序文も精読の価値がある


 ヴァールミーキ版を「語直し」といったのは、ヴァールミーキ版そのものからして、それ以前から伝わっていたものの「語直し」だからだ。ヴァールミーキの「創作」ではない。『イリアス』がホメロスの「創作」ではないように。