KING OF AYODHYA

 アマゾン・ジャパンに予約していた新世紀版『ラーマーヤナ』最終巻 KING OF AYODHYA 着。"Glossary" 15頁含めて501頁。


 各部のタイトルは
Kaand 1: The Left Hand of Darkness
  アーシュラ・K・ル・グィン『闇の左手』
Kaand 2: Isle of the Dead
  ロジャー・セラズニィ(未訳)
Kaand 3: The Book of Skulls
  ロバート・シルヴァーバーグ(未訳)
Kaand 4: The Forever War
  ジョー・ホールドマン『終りなき戦い』
Ati Samaptam: Lord of Light
  ロジャー・セラズニィ『光の王』


 この巻の内容はヴァールミーキ版でいえば第5篇「スンダラ・カーンダ=美麗の巻」の末尾から第6篇「ユッダ・カーンダ=戦闘の巻」全部。念のために記しておくと、ヴァールミーキ版の第7篇「ウッタラ・カーンダ=大団円の巻」に相当する部分は、アショーカ版には無い。


 この第7篇は一度再会したシーターを、ラーマが世間体を慮って離縁する内容で、昔からこれをめぐって論争が絶えない。それまでのラーマの行動と一致しないし、「完璧な人」であるはずのラーマが一度潔癖を証明した妻シーターにこういう扱いをするのはおかしい、ということから、ラーマの行動の理由としていくつもの説が出されている。


 文献学的には第1部同様、この部分はヴァールミーキの手になるものではなく、後世、おそらくはバラモンの権威を高めるためにつけ加えられたものとされているから、われわれとしてはそれに従えばいいだろう。


 アショーカも文献学と同じ見解で、新世紀『ラーマーヤナ』にそういう蛇足は不要と判断したわけだし、まことに妥当な判断ではある。


 したがって、この巻はラーマとシーターがアヨーディヤーに帰還する、一応のハッピー・エンディングに終るはずだ。


 しかし、そこにいたるまでの過程がポイント。ラーヴァナを倒すのはわかっているわけだが、どのように倒すか、そしてラーヴァナが十個の首をもっている理由が明かされるのか、さらにはラーヴァナという存在の意義が明かされるか。ラーマに比べるとラーヴァナは謎が多いキャラではある。単純なハッピー・エンディングにはならないはずだ。


 くわえて個人的にはシュールパナカーがどういう末路を迎えるか、ひじょうに興味がある。生残るのではないかと推測しているのだが、はたしてどういうふうに生残るのか。一瞬ヴィビーシャナとくっつくというアイデアが浮かんだが、それはまずありえないだろう。