新装開店

 というわけで、新装開店。


 『ラーマーヤナ』の続きは当分出ない。
これが売れない一番の原因は
インドの固有名詞になじめない人が多いことらしい。
インド自体への関心は高まっているから、
いずれはわれわれの時代が来ると信じてはいるが、
カネの方面ばかりとりあげられる事情を見ていると、
時間はかかりそうである。



 まあ他にも翻訳に値するものはたくさんある。
ここに訳出したのは、
アメリカの作家コリィ・ドクトロウが昨年
ある Web 雑誌に発表した短篇。


 ドクトロウは著作権についてさばけた考えの持ち主で、
2本の長編も含め、全作品をネットで公開している。
ネット環境があって、その気になれば、
事実上タダで全部読める。


 そのほうが本も売れる、というのが彼の考えで、
それが正しいことはすでにいろいろの形で証明されている。
なにより、そうでなければケータイ小説のベストセラーなど
生まれるはずがない。


 公開するだけでなく、
どれもクリエイティブ・コモンズのライセンスになっていて、
その条件に従うかぎり、
自由に翻訳、翻案(映像、演劇など)していいよ、
という太っ腹なやり方だ。


 この翻訳自体も同じライセンスを継承している。
とはいえ、これを利用して何かする場合には
ご一報いただければありがたい。
なにか、一緒にできるかもしれないし、
場合によっては著者を巻きこむこともできるだろう。


 また、この翻訳でおかしいところ、つまらないところなどがあれば、
ご指摘ください。
改善に努めます。


 著者のこの態度にこたえて、
複数の作品の英語以外の言語への翻訳がネット上でされている。
そのうち、最も人気が高く、翻訳がダントツに多いのがこの "Scroogled" だ。
著者のサイトのリストによるとこの日本語が15番め。
著者の話ではもうすぐキムリア(ウェールズ)語版ができるそうだ。


 ちなみにその他の言語版を出現順にしるすと、


スペイン語
ペルシア語
ロシア語
オランダ語
ドイツ語
ポーランド
ポルトガル語
イタリア語 (D)
ルーマニア語
マケドニア
イタリア語 (R)
ラトビア
トルコ語
ブルガリア
フランス語


 最後の二つは日付がわからないのでここに置いた。
アジアの言語が少ないのが印象的。
中でペルシア語版がいち早く出現しているのはおもしろい。
これからどこまで増えるか、楽しみでもある。
『ハリポタ』の数を抜けるか。


 こういう試みはおもしろいので、
ヒマを見てコリイの他の作品も翻訳してみようかと思っている。
リクエストがあればどぞ。


 なお、コリィの第一長篇 DOWN AND OUT IN THE MAGIC KINGDOM は早川書房からマジック・キングダムで落ちぶれて (ハヤカワ文庫SF)
『マジック・キングダムで落ちぶれて』]として公刊されている。