ラーマと鴉

 アショーカのサイトで面白いやりとり。


 ある読者から、
第4部『ハヌマンの軍勢』の中で、
ラーヴァナは様々な動物や鳥に憑依することができるが、
鴉だけは例外
とされているのはなぜかという質問。


 アショーカの答えるに、
鴉は「ラーマのもの」とされている。
というのもヴァールミーキなどでラーマは
「鴉のように黒い」髪、
「鴉のように黒い」眼、
を持ち、
体の色も黒い
とされているからである。


 そもそも「ラーマ」という言葉自体
サンスクリット語で「黒」を意味する。
ただの黒ではなく、漆黒、鴉の濡れ羽色の黒だ。
その点では「クリシュナ」も同じ意味。


 したがって鴉はラーマの友であり、
当然ラーヴァナは憑依できない。



 同じく『ハヌマンの軍勢』で
シーターを拉致しようとするラーヴァナを
鳥の大群が自らを犠牲にして妨害するシーンがあるが、
あそこに鴉はいただろうか。


 八咫の鴉や〈七つの子〉のように
もともと日本語世界でも鴉は親しみをもって遇されてきたはずだ。
いま鴉との関係がぎすぎすしたものになっているとすれば、
むしろわれわれの側が道をはずれているのではないか。