人事を尽くす

 土曜日の毎日新聞朝刊のポプラ社の新刊広告の筆頭に『蒼の皇子』が出ている。
売行きに関してはまだ何も知らせはない。
が、出ました、売れました、という本ではないだろう。
ラーマーヤナ』という名前は知られていても、
それだけで手に取る人はまだまだ少ないだろう。
インドに関心のある人は少なくないだろうが、
そういう人たちが皆『ラーマーヤナ』にも興味があるとは思えない。


 一方で、そう簡単にベストセラーになって欲しくはない、という想いもある。
すぐベストセラーになる本はまた、たいていすぐまた売れなくなる。
この本はまだ始まったばかり。
なにせあと原書で5冊、邦訳多分10冊はある。
11、ないし12冊という可能性もある。
初っぱなだけ売れて、あとはさっぱりではむしろ困る。
はじめから全然売れません、あとになってもダメです、というのはもっと困るが(爆)。


 理想はだから、じわじわと売れていって、いつまでも売れつづける、というロングセラーだ。
著者の元に送られてくる売行き部数の報告によれば、
第1冊が出た2年前より今のほうが勢いがついているそうな。
しかもいまだに第1冊目が一番売れている。
つまり、まだまだ新しい読者を獲得しつづけている。


 もちろん英語の原書は全世界で売れている。
英語読者のいるところではどこでも売られている。
その中にはインドもあり、当然ながら、売行きの中でインドが占める比率は高い。


 とはいえ、原書の売れ方は当然訳書の売れ方にも少しは反映する。
原書の魅力を伝える翻訳になっていればだが、
それはもう読者が判断することだ。
人事を尽くして、天命を待つ、の心境ではある。


 もう一つ、著者にも言われたことだが、
このアショーカ版『ラーマーヤナ』が日本で売れるか売れないかは
ラーマが、あるいは物語自体が決めることでもある。
言換えれば、まさしく「天命」である。


 だから、人間としては本来、
結果について思い悩んではいけない。
結果は「天」にまかせ、
なすべきことを全力に尽くしてなせばよい。
仕事とは本来そういうものである。
それこそ「人事を尽くして、天命を待つ」ことである。


 それにしても「人事を尽くす」のは、並大抵のことではない。
ここまでやればOKという指標はどこにもないからだ。
言換えれば、
もうこれ以上できません、
というところまでやるしかない。
結果が出るまでは。


 結果が出れば、
それにしたがってまたやるべきことがわかる。
ここで、じわじわと売れるというのは、
結果が出るまで時間がかかることになる。
いずれにしても、
今回の一応の結果が出るのは、
もう少し先になりそうだ。