ラーヴァナ像

 現在発売中の『ダ・ヴィンチ』8月号に
見開き2ページで紹介記事が載った。


 ぼくも話を聞かれたのだが、
とてもうまくまとめられて、ありがたいことではある。


 それよりも気に入ったのはタイトル・バック、
というか冒頭に掲げられているイラストで、
それも中央奥にドーンとひかえるラーヴァナである。


 ラーヴァナの首は本来は10個なので、
その全部は描かれていないが、
そうそう、こういう感じでしょう、と膝を叩いた。


 同時に、もっといろいろな人の描くラーヴァナが
見たくなってきた。
なにせ頭が10個あるキャラクターなんて、
世界中探したって他にはなかろう。


 はじめ10個というのは象徴だと思った。
次には入れかわる、もしくは交換されるものかなと思った。
ほんとうに10個の首が
横一列にならんでついている描写が
もろに出てきた時には、
正直、ひっくり返ってしまった。


 この10個の首は中央がひときわ大きく、
本人から見て右側に4個、
左側に5個ついている。
おもしろいことに、
個数の少ない右側のほうが左側より長いらしい。
(『蒼の皇子』下巻第二部「人間以上」13章)
この点、不思議に思って作者に確認した。


 実は首だけではなく、
腕も10組ある。
ふだんは9組は体に巻きつけてしまってあるらしい。


 しかもだ、
この怪異な作りが決して醜くはないのである。
相応に太い首や上半身が発達し、
全体としてはむしろ、
男性美の一つの極致になっている。
上記初登場のシーンにもあるが、
第二篇『聖都の闘い(仮)』の
シーターの婿選びのシーンに詳しい。


 こういうキャラクターであれば、
文章による描写を読んで
想像をたくましくするのも楽しいが、
すぐれた絵師に「見えた」ラーヴァナを見てみたい
という気が起きても無理はない。


 そしてこの点では、
日本の絵師、
アニメやマンガを中心とした
わが国の視覚文化の担い手たちに
肩をならべるものは、
いま世界にはない。


 この高橋賢成さんという方は、
いわばラーヴァナの視覚化の先頭を切ったわけだ。


 プロ、アマを問わないオープンの
「ラーヴァナ・イラスト・コンテスト」を
開けないかと妄想してしまう。