追いこみ

 第三篇『樹海の妖魔(仮)』の作業が追いこみに入っている。


 さぼっていたわけではないが、
この篇はシリーズ中最大のボリュームで、
ラスト直前の胸突き八丁がいつもよりつらい。


 とにかくアップまで、
すべてのイベント、予定はキャンセルして、
ひたすら朝から晩まで机に向かう毎日。


 昼は手書き、
夜はすでにできている手書き初稿を
訂正、改訂しながら、Macに打ちこむ。


 パソコンが楽なのは
頻出する言葉、固有名詞を
かたはしから短縮で単語登録できること。
もう四半世紀ほど昔、
個人用ワープロが出始めの頃、
個人で真先に導入したのが翻訳家だったというのはうなずける。


 ぼくももちろんずっとパソコンでやっていたが、
昨年、初稿は手書きに回帰した。
ある仕事で、原書の文字が細かく、
モニタと原書を往復するのが面倒だった。
ふと思いついて手書きをしてみたところ、
比べものにならないほど楽。


 おまけに文章もやはり違ってくる。
これはぼく自身が手書きで育っているからでもあるだろう。
ケータイでの文字打ちに慣れて育った人はまた違ってくるはずだ。


 この第三篇は
物語全体のターニング・ポイントでもあるし、
聖典」としての性格がもっとも強く出るところでもある。
第一篇『蒼の皇子』、第二篇『聖都の戦い(仮)』とは
だいぶ性格が違う。
物語もめまぐるしく展開する。
分量は多いが、
内容もそれだけ複雑、多岐にわたる。


 前2篇とは叙述のしかたも変わってきて、
急速な展開に気をとられていると、
思わぬところを見のがしかねない。


 そしてこの第三篇のラストは、
これ以上ない、究極の「引き」である。