ohshimayutaka2006-10-10

『聖都決戦』発売
 われらがアショーカ版『ラーマーヤナ』第2篇『聖都決戦』が上下二分冊で発売になりました。
低価格税込1,890円也。増ページで同定価! 出血大サービス!


 お近くの書店にない場合はネットでどうぞ。


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 アマゾン・ジャパンはなぜか、消えてしまいました。
先週末にはちゃんとあって、予約受付中だったんですが、謎。
鋭意調査中。


 この第二篇ではヒロインのシーターが登場します。
なかなか粋な登場のしかたです。
ヒロインの紹介のやり方としてはかなり異色かも。

 シーターは、ラーマの故郷コーサラ国とは最も親しい国
ヴァイデーハ国の大王=マハーラージャ、ジャナカの長女。
妹ばかり三人います。
ただし、下の二人は本来はジャナカの亡くなった弟の娘です。
が、ジャナカは引き取った娘たちをまったくの姉妹として育ててます。

 そもそもシーター自身、ジャナカが王妃との間にもうけたという意味の娘ではありません。
アショーカ版でははっきり書かれませんが、
シーターは大王専用菜園の畝の間にいたのをジャナカが見つけ、
娘として育てたのです。
かぐや姫のようなものです。


 もちろんシーター本人はそんなことは知らず、
ただ、ものごころついた時には母親がいなかったと思っています。


 シーターがジャナカの血をわけた娘ではないことはインドでは常識なので、
あえて書かなかったのかもしれません。
ただ、このことを知らないとわかりにくいところもありますので、
一応頭の隅にでもおいといてください。


 シーターの父ジャナカの治めるヴァイデーハの都がミティラー。
物語の後半はこのミティラーでのドラマです。


 ジャナカはダシャラタとは対照的に、物量による力と繁栄とは求めません。
あくまでもアヒンサー=非暴力と精神の鍛錬によって平和と文化の多様な発展を求めます。
そのため、軍事力を極端に削減し、代わって文化と学問を奨励します。
そこでミティラーへは多数の高徳な婆羅門が集まりました。
「聖都」とはこのミティラーのこと。
そして、ここで空前絶後の決戦が行われます。


 ラーヴァナも華々しく、本格的に登場し、ついにラーマと対決。
正直、このラーヴァナはなかなかかっこいいと思います。
変装してのこととはいえ、単身、敵の真只中に堂々と踏みこんでゆきます。
山田風太郎の『柳生忍法帖』で、
手ぐすね引いて待ちかまえる敵の城に単身踏みこんでゆくヒーロー、
柳生十兵衛の姿を思いだしました。


 ラーマたちの冒険もたっぷり。
 中でもラーマが千年におよぶ罰を受けている絶世の美女アハリヤーを救うため、
聖なる池に潜るシーンはまことに美しい。
 はでなアクションだけでなく、アショーカ版にはこういう美しいシーンが随所にあります。
ラーマが水に潜るシーンはもう一つ、ずっと後にあって、これまた実に美しい。


 第一篇『蒼の皇子』でラーマたちのお守役として渋い役どころを見せたベジューも健在。
特にラスト近くでは、これまたかなりシビレルふるまいを見せてくれます。


 そして最後の最後での大逆転。先に読んではダメですよ。