お守り

 今朝は寒いというので
布団を1枚よけいにかけたら、
かえって汗をかき、
体が冷えてしまった。


 一昨日から昨日にかけて、
別の仕事で山中湖に行っていた。
半分ほど雪をかぶった富士がきれいだった。


 一昨日出かける直前に、
『樹海の妖魔』上巻再校ゲラに赤を入れたものを、
編集部宛発送する。
木曜の晩にファックスで入ってきた、
書きかえた冒頭1章のゲラもチェックして同封。

 あの二人、もう完璧に息が合っているではないの。
わたくしとダシャラタがあんな風になれたことが一度でもあったかしら。
思いだせるかぎりでは無い。
若くて元気のよかった頃ですら無かった。
カウサリヤーはうろたえてサリーに包まれた自分の胸に手を当てた。
二人の幸せを嫉むような想いを抱いてしまったことに気がついたのだ。
そうだ、これを見ている人びとの中に、敵意を抱く者がいるかもしれない。
それで生じるかもしれない悪運を撃退するための、特別のお守りの儀式を行おう。
ラーマの幸福を願うことでは誰にも負けないはずのこのわたくしでさえ、
ごくかすかとはいえラーマに妬みを感じることがあるならば、
それほど好意を持ってはいない心の持主から、どんな情け容赦ない想いが飛んでくるか、
想像してみるがいい。


 あんな完璧な似合いのカップルは、それだけで、見物人の中に嫉妬の想いを引きおこすはずだ。
たとえば生まれたときからラーマの外戚になれるのではないかと
期待していたたくさんの王族や貴族たちだ。
その人びとは今でも期待しているはずで、
ラーマが他の組合せを考えようともしないとは思いもよらないだろう。
だが息子の人となりを知り、今の満ちたりている様子を見れば、
ラーマがもう一人妻を迎えるようなことが、
たとえあったとしても、ずっと先のことであると直感でわかる。
そうなれば嫉妬と怒りがちょっとした雪崩のように降りかかってくるはずで、
撃退の儀式をあらかじめ行っておくだけの価値はある。
生まれたばかりのこの愛を守るために、できることは何でもしなくてはならない。
この愛がどれほど貴重で儚いものになりうるかはわかっている。
ああ、デーヴィー様、我らにお恵みとご加護を垂れたまえ」

第一部「平和」84pp.


 例えばこういう一節にぼくなどはインドを強烈に感じる。


 一方で、この感覚には共感を覚える。
眼に見えないが、存在を感じられるつながり
に対して備える感覚。


 どう備えるかは信仰に関わってくる。
初詣や
買った車のお祓いに
地鎮祭
墓参り。


 移民やアジア系ではない欧米の読者は理解できないか、
違和感を覚えるのではないか。