『ラーマーヤナ』原版の近況

 公式メーリング・リストに流れた著者のメールによると、
来年4月、インド・ペンギンから
ラーマーヤナ』のハードカヴァーが刊行されます。


 ペーパーバック・オリジナルで出た本が、
シリーズ完結後にハードカヴァーで出るのは
インドではもちろん、
世界的に見ても異例中の異例です。
理由は単純に、
ハードカヴァーを求める読者が多いためだそうです。
ラーマーヤナ』のペーパーバック原版はロング・セラーになっており、
しかも年々販売数は着実に増えているそうです。


 ハードカヴァーは3巻で出版されます。
これは元もと著者が望んでいた形で、
それに伴い、各巻のタイトルも著者が当初考えていた形にもどされます。


 すなわち、以下の通り。

PRINCE OF DHARMA: incorporating Prince of Ayodhya and Siege of Mithila
『ダルマの皇子』(『蒼の皇子』と『聖都決戦』の合本)
PRINCE IN EXILE: incorporating Demons of Chitrakut and Armies of Hanuman
『追放の皇子』(『樹海の妖魔』と『神猿の軍勢(仮)』の合本)
PRINCE AT WAR: incorporating Bridge of Rama and King of Ayodhya
『戦いの皇子』(『神々の橋(仮)』と『蒼の大王』の合本)


 実を言えば著者としては
すべてを1冊で出したかったそうですが、
3,000ページのペーパーバックは製作不可能でしょう。
ハードカヴァー3巻の合計は2,400ページになる由。


 とはいえ、この分け方は確かに納得のゆくもので、
合本になる二冊は各々に話がつながっています。
三部作の黄金律を守ってもいるわけです。


 さらに加えて、
著者はペーパーバックでは7冊目、
ハードカヴァーでは4冊目に当たる巻を
書くことを真剣に検討しています。
これまではこの『ラーマーヤナ』は6冊で終わり、
続篇はぜったいに書かないと公言していましたので、
これは大きな変化です。
理由は『蒼の大王』では故意に回答を控えていた問題が、
現在執筆中の『マハーバーラタ』現代版のなかで、
再び浮上してきたため。
特にクリシュナに関わる部分だそうです。


 ヴァールミーキの「原典」では、
第7篇「大団円の巻」にあたる部分を、
アショーカは書いていません。
すなわち、即位後しばらくして起きた
大王ラーマによるシーターの追放の部分です。
『蒼の大王』はラーマたちがアヨーディヤーに帰るところで終わります。


 この部分は古来『ラーマーヤナ』をめぐる論争のタネになってきました。
大きく分ければ、
シーターの追放はラーマにふさわしくない行為とする論と、
シーターを追放したからこそラーマは偉大だとする説
の二つです。
アショーカはこのエピソードをあえて切ったわけですが、
やはり何らかの結論を出す必要を感じたのでしょうか。


 クリシュナの物語についてはアショーカは別に書く予定だそうです。
こちらは『マハーバーラタ』が始まるまでのクリシュナの物語になるはず。
クリシュナの後半生は『マハーバーラタ』の中で語られています。