パラシュラーマ

 やはりどうもおちつかない。おちつかないのは春のせいばかりではないことはわかっているが、直接の原因に対しては今のところ、自分ではどうしようもない。とにかくできる範囲、つまりは第3巻の翻訳を粛々と続ける以外にない。こういう時は右往左往するのが一番良くない。後はブログで宣伝にこれ努めることだ。


 とにかく今日は1章あげる。ようやく、である。この章の最後はほんの数秒間のできごとを2ページかけて描いている箇所で、恐ろしく細かいものの描写を重ねてゆく。そうしながらも原文は緊迫感を失っていない。それを訳文でも保つのはなかなかに容易ではない。


 ここでラーマに決闘を挑むパラシュラーマという人物もなかなか面白い。本来はヴィシュヌの十の化身のうち六番目、つまり七番目のラーマすなわち『ラーマーヤナ』の主人公の直前の化身のはずだ。このアショーカの版では聖賢ジャマダグニの長男になっているが、Nanditha Krishna の THE BOOK OF VISHNU (2001) によれば、五番目の息子という。近くの川で行水を使っていて目撃したカップルの様子に心を乱した妻に怒り、これを殺すよう父が命じた際、四人の兄は拒んだため父の呪いを受けて白痴になった。パラシュラーマはためらわずに斧で母の馘を切落した。父が褒美に望むものをやろうというと、パラシュラーマは母の生命と清浄の復活、兄たちの知能の復活、そして自分には戦闘で負けないことと長寿を望んだ。父はこれをことごとく承知した。


 この後パラシュラーマは父をあるクシャトリヤの王に殺されて、クシャトリヤを一人残らずこの世から抹殺することを決意し、実行に移す。クシャトリヤは当時傲慢になり、戦争ばかりしていたためでもあった。そして一度隠棲していたのをラーマがミティラーでシヴァの弓を折ったため、ここでラーマに挑戦する。


 斧一丁で世のある階層に属する者を根絶やしにするのは詩的ですらある。どこかひどくインド的な感じもする。


 もう一つ面白いのはパラシュラーマの伝説には亜大陸南部のカルターナカやケラーラがふわふわと離れていたのを引きもどしたというものがあること。オオクニヌシの伝説と同系列なわけだが、何か関係があると考えるのも一興。だから、この南西部地方でパラシュラーマ信仰が盛んという。