エキゾティズム

 ゲラに赤字を入れる作業は楽しい、
というのは他人の原稿やゲラが相手の時である。


 自分の原稿に入れられた赤字を点検するのは、
身を切られるのに等しい。


 さんざん悩み、
原文と格闘し、
ネットを駆使して調べまくり、
ようやっとひねり出した訳文に、
「意味がわかりません」とか、
「表現がおかしい」とか、
赤が入っているのを見ると、
一瞬血が逆流する。


 おまけに悔しいことには、
そういう指摘はたいていあたっている。


 書いたときには
やった
と思ったつもりの文章が
あらためて読んでみると自分でも意味がわからない


 物語に入りこんでしまい、
的確な翻訳のために
適切な距離をとれないためだろう。


 もう一つの障碍は
インドの文化自体である。