著者序文
締めくくりに 同様な道をたどった二人の尊敬すべき著者から 短い引用をすることをお許しいただきたい。 一つめはK・M・ムンシで、 かれの『クリシュナヴァタラ』シリーズは、 古代の物語の現代における語りなおしのジャンルで、 手本となる作品の地位を守…
ひとつ、はっきりさせておきたい。 これはヴァールミーキの物語ではない。 カンバンのものでもない。 トゥルシーダースのものでもない。 ヴィヤーサのものでもない。 R・K・ナラヤンのものでもない。 ラジャージの、楽しい子ども向けの縮約版でもない。 こ…
それでもなお、 様々に異なる版や変装の民主的ごたまぜの方が良いか。 それとも断片的にしか回復することのできない、 ほとんど忘れられた神話のように、 忘却され廃れてぼんやりと思い出されるだけの物語であった方が良いか。 ヴァールミーキの「オリジナル…
おばあさんが夜、 孫たちにこの物語を語りなおすとき、 ヴァールミーキの『ラーマーヤナ』を参考にしているだろうか。 羅刹の咆哮やラーヴァナの笑い声、 あるいはシーターの涙や ラーマのストイックなふるまいを再現するとき、 その演技は誰のものを元にし…
自作を完成して ヴァールミーキがまず気がついたのは、 できあがったものが不完全だということだった。 語る相手が誰もいなくては、 物語の良さは何になろう。 かれの時代の伝統では、 詩人は己の作品を自ら朗詠するのがふつうだった。 あるいは何らかの見返…
これから掲げるのは、著者がインド版原書に付けた序文だ。 ざっと訳しただけで、きちんとした見直しも編集もしていないので、 訳のおかしなところも残っているが、ご容赦願いたい。 ここにはなぜ今新たな『ラーマーヤナ』の語りなおしをしたのかが、熱く述べ…